2003年版

高島市安曇川町中野  電話 0740-33-0560    
  学年は1年下ですが、当時中学校が3ケ所に分かれていて、三年生だけが本校に通っていた時代。清水君は広瀬分校で私は本校でしたから、子供の頃の面識は有りません。高校も彼は長浜農業高校。今と違って進学率が20%位だった当時、農家の子弟の通う高校としては、「ナガノー」は県内きってのエリートコースでした。
   
  出会ったのは競技スキーを通じて。安曇川町の中でも山寄りの広瀬地区では、体育の教師をしておられた山本信次先生がスキー愛好者で、その熱心なお誘いのお陰でスキーヤーが多く、成人してからも熱意は冷めないで車に乗り合わせたりして、滋賀県民体育大会スキー競技会には毎年参加していました。

  清水君も、私の2年上の従兄弟・北川佑一君、2年下で食糧事務所に勤務する桑原長市君、若くして交通事故で亡くなりましたが同級生の林栄一君も、みんなアルペン競技に出場しながらリレー競技にも出て、「死ぬ思い・・・・」をした仲間なのです。
   
  高島郡民体育大会では、私の方がクロスカントリー競技専門なのですが、アルペン種目の指導員資格を持って、「サンケイバレー」(現在のビワコバレー)で冬場のアルバイトにパトロールをしていた清水君に、試合で負けたことも有ります。
   
  農家としての清水君に再会した頃は、彼はもう町内でも指折りの専業農家でした。長男の祐介君は、スキースポーツ少年団に入団。勿論私の子供達は3人とも団員でしたし、中学校では私の次男・佐利と同級だった事もあり、ますます縁が深まりました。
   
  平成7年には次女の理恵さんが、欧州派遣農業研修生として1年間、スイスで農家実習。平成12年には長男の祐介君が、派米農業研修生として2年間の米国農業研修に参加。いずれも私が渡航前講習を担当しました。
   
  農家としての実力は申し分有りません。早くからコンピューターを取り入れるなど進取の気性に富み、無農薬・有機栽培にも取り組んで、滋賀県の提唱する「環境こだわり農産物」の生産にも、意欲を燃やしています。米は宅配便での直売を手掛け、酒米の山田錦も栽培していて非常に熱心な事は当然として、何とか安全で美味しい米を生産したいという、熱意に溢れていると見ています。生産には熱心でも販売は得意でないのが、強いて言えば弱点でしょうか。

 種籾の消毒にも農薬を使わず、60℃の温湯に8分間漬けることで、病気を防いでいます。

  無農薬栽培をするために、大きな苗を育てて雑草に負けないようにと、わざわざ「みのる式」ポット苗で田植えをしています。   こちらは普通栽培用。育苗箱に60g〜80gの種籾を蒔き、プール育苗で育てています。

 何棟ものハウスは、水の管理だけでも大変。この辺は奥さんの敏子さんの領分。  何年もの試行錯誤の末、近年は本当に良い苗が作れるようになりました。

  6月1日は台風4号の通った影響が残っていて終日小雨。田植えをしていれば写真を撮りに来るからと、取材?の約束をしていましたが、清水君も代掻きをしていたとか。 2日、天候が回復したので改めて見に行くと、8条植の田植機を試運転中でした。

  メーカーの技師と一緒に植えているのを見ていると、下の右の写真の6条植では周囲を植える為、外周を2回は回らなければなりませんが、この8条植だと回る回数が少なくて1回で済み、効率も良さそうでした。

  しかしこの新型の田植機は、価格が350万円だそうで思案中とのこと。農業機械は高価なのでなかなか簡単に買い換えが出来ませんが、取り分け使う期間が春の田植えの1ヶ月余りに限定され、しかも清水君の様に大型農家になると、この田植機が3年位しか持たないのが悩みの種だとか。


  奥さんの敏子さん丹精の畑。遠景は大小2棟の倉庫と育苗ハウス群。    畦塗り機も新型に替わっていました。

  米糠をペレット状に加工して乾燥。無農薬栽培をする田に除草効果を狙って、代掻き前に散布しています。

 田の耕起に使うロータリーも、幅2メートル。ページトップの写真にある代掻き用のドライブハローは、折り畳み式で幅2、8m   籾殻や堆肥をダンプに積み込んだりするのに使ってるホイールドーザー。勿論除雪にも使えますが。

 育苗用の培土は何種類も有ります。20kg入りの物と、この様な1トン入りのトンバッグに入った物と、用途によって使い分けています。

 「 いげた燐酸」(3-20-0)と「コシヒカリ専用・えびす印燐安加里」(10-14-13)が「コシヒカリ」に  「マグホス」は荒起こしの時点で施用

  昨年までは「えびす」と「いげた」が主力。今年は「たから印燐安加里」(10-20-15)が増えました。

 有機栽培をするために取り寄せて納品する、このシーバードグアノの様な特殊な肥料も。  収穫した米はこの「安曇川そだち ひとすじ米」の袋で出荷を待ちます。
 反別や品種によって使い分ける、何台もの大型乾燥機が並ぶ鉄骨の倉庫。乾燥の済んだ籾は貯蔵用のタンクに保管出来る様になっていて、隣の倉庫には籾を貯蔵する大型の保冷庫も有ります。

 滋賀県は「近畿の水瓶」と呼ばれる琵琶湖を抱えているため、従来から何処の府県よりも農薬の使用には厳しい規制が有りました。この「環境こだわり農産物」は、その上更に化学肥料の使用割合を半分以下に減らし、堆肥などを積極的に使用して土造りを進め、琵琶湖の水を汚さずしかも美味しい米を生産したいという、欲張った農法なのです。

  とりわけ農家に厳しいのは、農薬が自由に使えないことでしょう。今年の様に梅雨時に日照不足で、稲が軟弱気味に育っている年には、どうしてもイモチ病が出ます。農場のある安曇川町では山手になるこの地域では、圃場の条件次第で病気が広がります。しかしながら稲の生育期間内に、7成分の農薬しか使ってはならないと言う制約があり、みすみす減収すると解っているのに消毒をしないで放任するのか、頭を痛めている所です。除草剤を1回使えば、少なくとも2〜3成分の農薬が入ります。完全にイモチ病を押さえ込むには、最低でも穂の出る前後に2回消毒をしなければならず、すぐに規制を越えてしまうのです。

 ここは、田植機を試運転していた田です。この辺りに「環境こだわり農産物」の生産圃場が有ります。

 2ヶ月前の田植え直後の写真と比べると、かなり良く生育しているのですが、株の張りが少し不足しているようです。畦道談義をして今年の稲作を振り返り、これからの施肥と来年の対策を話し合いました。

 除草剤の使用も控えるため、どうしても「オモダカ」「クログワイ」などの多年生雑草が絶えません。その上今年はイモチ病が多く、看過出来ない所まで来ています。

 8月27日 出穂した稲穂が傾き始めました。

 環境こだわり農産物よりも更に条件の厳しい、「有機栽培」の圃場が有ります。ここは化学合成された肥料は一切使え無い上、農薬も全く使わないで3年以上経過して、初めて「有機栽培の米」と認定されます。稲の育っている所は植物同士の競合でもう少し少ないのですが、稲の無い所はごらんの通りに雑草が生えます。除草剤を使わず、除草効果を狙って米糠などを使い、当然機械除草も行いますが非常に厳しいのが現実。草に負けて収量もなかなか思い通りには上がりません。
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