今年の稲作 2003年
準備作業
 米作りの現場から季節を追って、稲の育つ様子を写真に撮り、順次載せています。
  暖冬になるとの長期予報を訂正し、平年並みの冬になるとの事でしたが、西日本各地でかなりの積雪が有り、北陸地方も大雪に見舞われていたのに、滋賀県は例外的に雪が少なかった様です。それでも天候不順は相変わらずで、奈良のお水取りが済むと関西に春が訪れると言いますが、ここ滋賀県では、3月下旬比叡山で執り行われ、荒れじまいと呼ぶ「比良の八講」が済むまでは、春は来ないのが通例なのです。
  左の写真は隣町・高島町の役場前で見つけました。5月の連休に田植えをする兼業農家が圧倒的に多く、県の中央部に琵琶湖を抱える滋賀県では、夏の夜温が下がり難いという悪条件に加えて、地球温暖化の影響で、田植えの時期を遅くしないと、コシヒカリの出穂が早まってしまって、夏の一番暑い頃に稲が稔ることになってしまいます。何とかこれを解決し品質の向上を図る為、行政も乗り出したと言うわけです。
  元々五月下旬に田植をしていて、3年前から6月上旬にまで遅らせている私からすれば、やっと分かって貰えたか、という感じです。 余談ですが、高島町は義兄の萬木綱一が町長をしています。
合同井堰
  滋賀県では屈指の大河である安曇川には、山あいを流れる朽木村から安曇川町に入る辺りに、この合同井堰が作られています。右岸の安曇川町、左岸の新旭町の田畑を灌漑する目的で作られた物で、川の水は此処で2つの水路に分けられて流れて行きます。最近直ぐ下流に魚道が造られました。
  この合同井堰は、母の長兄・北川佐十郎が、設立当初から永年にわたって理事長を務めていた、安曇川沿岸土地改良区が管理・運営をしています。



  合同井堰で分けられた水は、一端左岸に出て更に二手に分かれ、川の下をくぐって右岸に出た水が、ここから水路を通って、安曇川町内に流れて行く事になります。3月と7月と年に2回、水路の両側の草を刈ったりゴミを掃除したりします。町内各集落が水路を分担し、大勢の協力で水路掃除に当たります。

  水路は段々と細くなって、田の灌漑用水となります。車の通れる程の農道のそばを流れる水路は、U字溝等で作られますが、そうでない所は今でも素堀の為、春先には関係者が出て溝掃除をします。

 合同井堰から水路を流れた水は、田畑を潤す農業用水に使われるだけではなく、昔から我々の生活用水になっています。春になると「カワタ」と呼ぶ家の前の川に、色々な魚が遡ってきますが、この日は珍しく13・4pの大物を見つけました。

畦塗り
  下の写真は田んぼに立って田の畦を撮しています。草の生えた畦の左側は水路・右側が田ですが、畦ののり面に小さい穴が幾つも見えるのは、野ネズミやカエル・ヘビなどの作った穴。冬の間に出来たこれらの穴を全部塞がないと、田植水を入れても水路に全部漏れてしまいます。昔は畦を塗り固めていましたが、30年余り前から畦シートと呼ぶ塩化ビニールのシートを使うようになり、近年はトラクターに装着した畦塗り機で仕上げています。

  18日、十箱の藪にある桜が満開になりました。左千夫は畦ののり面をプロパンガスで焼いています。半月ほど前に除草剤をかけておいたのですが、すっかり枯れた草を燃やしてしまうと、この後畦塗機で処理する時に綺麗に仕上がって、田植え後の水の管理も楽になります。

  従兄弟の畦塗り機を借りて畦を塗ります。草が無いと非常に綺麗に仕上がるのですが、今年は雨が多く、佐千夫の草焼きが間に合わなかった所は、どうしても仕上がりは見劣りします。


種籾の消毒
  籾種の消毒から米作りが始まります。今年は農薬を使わず、60℃の温湯に8分間漬けることで処理しています。この機械は得意先の農家・清水光男君の物。昨年導入して旨く行ったとのことで、今年から使わして貰うことにしました。4月10日、酒米の山田錦が今年の仕事始めになりました。23日には残りの種籾を消毒するため再び出掛け、「コシヒカリ」「ひとめぼれ」「滋賀羽二重」をそれぞれ色の違う袋に入れて処理。家で軽く乾かした後塩水選をし、1週間程度水に漬ける事になります。


塩水選
  消毒の済んだ種籾を塩水選して、比重の小さい籾を選り分けます。私は硫安を使いますが、病気に掛かっていたり実入りが悪かったりする軽い籾は、水面に浮かびます。この様な籾からは丈夫な苗は育たないので、すくい取って捨てます。籾の消毒に薬剤を使う場合には、普通は塩水選が最初の仕事になりますが、塩水選を先にする場合には出来るだけ早く温湯消毒をしなければならない。出来れば1時間以内にと言われて、順序を逆にしています。

 塩水選が済むと1週間程度の間水に漬けます。2日置きに水を入れ替えますが、酸素不足にならないようにしばらく陰干しをしてから、再び水に漬けておきます。

耕土培養資材の散布
  鶏糞に微生物を培養した「タキアーゼS」と、「リンゴールデン」を主体に、籾摺りの時に出る小米も混ぜ込んで、ライムソワーで散布します。これはもっぱら長男・左千夫の仕事。BSEの問題で骨粉が使えなくなって、今年は入れておりません。このトラクターは昭和50年製のヤンマーYM2000。キャビンは手製で、ライムソワーも牽引型の物を3点リンクに装着できるように改造して、永年使っております。これだと油圧を下げてやれば車輪が回るので、PTOでライムソワーを回す必要が無いのです。

耕 起
 「日の本」の2804型.トラクター。我が家の主力です。.「日の本」は会社自体が既に無く、このトラクターもかなり年式は古いのですが、まだ250時間足らずしか使っていません。時間が有ればこっちにも、キャビンを作りたいと思っています。

  田を起こしに行くと腹立たしい様な場面に遭遇します。左の写真の田は東側に何年も耕作を放棄した田が有って、草藪です。右の写真は私の所有田では有りませんが、頼まれて起こしに行くと、町道の際にはこんな物が捨てられています。ジュースの空き缶も腹が立ちますが、電球や茶碗、眼鏡のレンズや焼き肉のタレの空き瓶が、何でこんな所に捨てられるのか、理解できませんね。トラクターの上から余程注意をして見ていないと、草の中に埋もれて居るこれらのゴミを、土の中に鋤き込んでしまい、うっかりしていると破片で大怪我をすることになります。

種籾蒔きと苗代
  連休が終わって我が家でも、苗箱に紙を敷いて土を入れる作業が始まりました。紙は私のように苗代を作って苗箱を置く場合には不必要なのですが、種を蒔いてから天気や仕事の都合で直ぐに苗代に設置できない事が有り、土が乾きすぎるのを防ぐため保水紙「アクアキーパー」を使っています。育苗用の培土も色々ありますが最近は「ベストマット」。播種機は山田錦の播種が終わると吉原さんの所から借りてきて、清水君の60g蒔き用のギアを借りて組み合わせて使います。この日は外で仕事を始めたら雨になりそうだったので、急遽倉庫の中に移動して作業を行いました。

 育苗箱を保管しているのは、肥料を積んできたパレット。何年も使っていると古くなって痛んできますが、2・3枚から良いところを取って修理し、2x4で枠を組んで作ってあります。1枚のパレットに約240枚の苗箱を載せていますが、土を入れた時も種籾を蒔いてからも、苗箱はこのパレットに載せて移動します。


 こういう播種機を使うと作業ははかどります。時々は1人でもこなしますが一般には人数が必要で、育苗箱を播種機に載せるとまず水が撒かれ、籾種が落ちて覆土されて全行程が終了です。我が家では佐千夫が、育苗箱を載せるのと覆土用の土の補給、それに水の加減を担当しています。私は出来上がった苗箱をパレットに積み込む係です。下の左側の写真は、覆土を途中で止めて撮影したもの。実際は右の写真の状態で出てきます。

田植機の試運転 5月10日(日)
 苗代作りと平行して、近所の田を頼まれて植えるのがここ数年の例です。この苗は育苗業者から購入。私とは播種量も育て方も全く違い、かなり柔らくて細い苗です。この後5月下旬の山田錦までしばらくは田植をしないので、高圧洗浄機で洗車してお終い。


苗代と苗作り
 苗代地は昔から家のすぐ側の田と決まっています。川の側で水の便が良く、大昔は安曇川の氾濫で土砂が入った時代が有ったかと思うくらい、毎年拾っても拳より大きな石がゴロゴロ出てきて、非常に水はけの良い所です。毎年は秋の内に鋤いておくのですが天候不順で機会を逃し、今年は春も少し遅くなって鋤きました。苗床の幅140p位になるよう溝を切っておきます。

 畝を平らにし水を入れます。普通は苗床に肥料を撒くのですが、1ケ月余り置くとどうしても苗に出来不出来が出て、揃った苗になりません。途中で肥料切れをした場合は、液肥を施用することで対応しています。このパイプは同じ太さの塩ビですが、上の方が背割りしてあって下のパイプにぴったりと嵌っています。引き上げると水が入り下げれば水は止まります。

苗箱の設置    5月13日(水)

 高低差は最終的には手作業で直します。まるで子供のドロ遊びですね。腰の痛い作業なのですが。
13日から、苗床に育苗箱を置く作業を開始。先に蒔いた「ひとめぼれ」は芽を出しています。
叔母のお葬式で2日間作業を中断。その間に少し芽が伸びました。
太陽にあたると消えますが、中断して苗箱を作業場に積んでいる間に、小さな白いワタの様なカビが。

16日、今年初めてメダカを見ました。   後はワリフを掛けて、6時前にようやく作業終了

21日、ワリフの裾を上げて覗いて見ました。苗は順調に発芽して育っています。
  25日、かなり伸びています。右の写真、茶色の苗箱は「ひとめぼれ」です。
  6月2日、全部のワリフを取り去りました。苗は第3葉が出始めています。
 

  苗代に苗箱を設置してから約1ヶ月。ようやく田植えが出来る位に苗が育ちました。
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