平井農産の米作りについて
                                2002年10月
       「滋賀県の米」について
  「太陽と水の贈りもの」とよばれている滋賀県産の「近江米」は、古く江戸時代には「江州米」と呼ばれ、わが国を代表する良質米として、その名を知られていました。既製品の袋が無くて「まなむすめ」は「ひとめぼれ」の袋に入れていますが、品種的には姉妹品種に当たります。
      「米の味」について
 滋賀県一の大河・安曇川の三角洲の上流に位置し、水捌けも良く土も肥沃で、米作りには条件の良い土地柄です。田に入る水も家庭排水の心配が無く、我が家の前を流れる小川には小魚が泳ぎ回り、夏にはホタルも飛びます。さすがに飲み水にはしませんが年中とぎれる事もなく、鯉が泳ぐ池の水や野菜などの洗い物に使っています。
 肥料は商売柄自分が納得のゆく組合わせで、微生物を培養した堆肥と、酵素で醗酵させた有機質肥料を使います。回りの農家が田植えを終わる連休明けに苗代を作り、他の田が青々と生育している6月の上旬に、田植えをします。これで温暖化して酷暑となった7月下旬から8月中旬に、稲が出穂するのを避ける事が出来ます。回りの田が早稲を収穫するのは8月下旬。私は約1ヶ月遅れの9月23日、コシヒカリの収穫から今年の秋は始まりました。
 コンバインで収穫、250s程入ったグレンバッグを、ミニクレーンやフォークリフトでトラックに積込み、フォークリフトで乾燥機へ。時間は掛かりますが風だけを送り、出来るだけ火力乾燥を避けて自然に乾かしています。モミのまま倉庫に貯蔵。出荷前日に玄米にし、姉が嫁いでいる隣町の米穀店「萬木綱商店」で精米。2Kgと5Kgの真空パックにしてお届けしています。
      「米の安全性」について
 種籾の専門農協である富山県となみ野農協稲種センターから、直接送ってもらった良質のモミ種を使い、丈夫な苗を本数は少なく間隔を広く植え、風通しを良くして太く短く育てる事で、農薬は出来るだけ使わずに済む様にしています。今の所、種籾の種子消毒と本田には除草剤を使いますので、農水省の定める無農薬栽培の基準には合いませんが、滋賀県の定める「こだわり農産物」の基準には、問題なく合格しています。
      「平井農産」について
 滋賀県はその真ん中に琵琶湖があり、わが家は湖西地区と呼ばれる琵琶湖西岸にある安曇川町の、町役場などのある町の中心・南市に隣接する鍛冶屋村(小字名)に在ります。今は3軒増えましたが元は6戸、人口も32人で世界一小さい村?です。先年となり町の新旭町熊野本で、弥生時代の遺跡から鉄器が大量に出土して話題になりました。熊野本に近い平井と言う集落に、佐々木源氏の末裔が住み着いたと言われ、平井姓の由来だとされています。我が鍛冶屋村にも関係が有るかも知れません。
  昭和41年、大学(農学部農芸化学科)を卒業。42年6月、派米農業研修生の一員として渡米。2年間の農業研修から帰り、家業の平井肥料店を継ぎました。米作りは今年で35年目になり、稲作部門は平井農産という名称にしております。我が家は江戸時代中期の寛延年間に隣家から分かれたらしく、私で13代目とのことです。現在の母屋は、祖父が日露戦争から帰った時に頂いたお金を元にして、明治末期に建てたと聞いています。
  大きな地主だった訳でも無く小作農家でも無かった様で、北東側に隣家がある他は、三方を田に囲まれた田園地帯の真ん中に在ります。山の上から写真を撮って見ました。ほぼ中央部分に我が家が見えるのですが。
       
      「今年の稲作」について
  滋賀県肥料商業組合が主催する「米の食味検討会」が、毎年秋に行われています。米は果物などと違って、炊飯してご飯にしないと美味しいのかどうか判らないのですが、最近では食味計を使って機器分析が出来るようになり、米の食味が分かりやすく点数で表示されるようになりました。この催しには県下の肥料商が得意先農家の米を持ち寄り、食味を調べて検討し、どんな作り方をすれば美味しい米が出来るかを探ろうと言うものです。従って決して品評会では有りませんが、出品した以上は点数が気になります。私どもでは初回から続けて出品していますが、昨年初めて作った「こしひかり」が、2種類の食味計の平均値で比較すると、全体で1位の食味値を記録しました。「まなむすめ」は9位でした。一昨年はベスト10目前という成績だっただけに、努力を評価された様で嬉しい出来事でした。
  地球が灼熱化し、感温性が高くて特に温度に敏感なコシヒカリは、ここ数年の内に半月ほど刈り取り時期が早まっています。つまり夏の盛りの一番暑い時期に稔る事になり、夏バテをしてどうしても食味が落ちる訳です。この現象を避けるため我が家では、昨年から田植えを一段と遅くしています。
  コンバインに乗って刈り取りをしていると、例年ならウンカやヨコバイが飛ぶのに、今年は全く見かけないばかりか、春先から異常に多いとされていたカメムシの被害も少なく、私の様に「農薬は商売だから売るが、自分ではなるべく使わない」という人間にとっては、信じられないほど被害の無い年でした。稲刈りを始めると田の周囲は穂も大きく、瞬く間にコンバインのホッパーが一杯になりますが、中程に刈り進むに従って稲穂が小さくなり、ガッカリすることが多いものです。所が今年は周りも中も同じように出来ていて、非常に力強い感じでした。倒伏の心配も無く、長く稲作りをしていますが、全く経験の無い程見事な出来栄えでした。特に稲穂が美しく、あちこちの田で何度も写真を撮りました。
  秋に施用する土造り肥料には、鶏糞を微生物で醗酵し「健土・健食・健民」がキャッチコピーの「タキアーゼ」を使い、骨粉等の燐酸質肥料と共に鍬込みます。今年はレンゲも作って見ました。肥料は元肥から穂肥まで、全部「明星」という有機質肥料にしています。その他「エスサン肥料」というアミノ酸質肥料も穂肥に使います。農薬は種子消毒を温湯消毒にしようと計画中。これで除草剤を使わなければ完全な無農薬栽培ですが、一度だけしか使わない除草剤が旨く効かなくて、今年はタデとイボクサに大分やられた田が有りました。米糠等が除草剤の代わりになると聞くので試してはいますが、もし失敗すれば取り返しがつきませんので、なかなか思い切れません。
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