コシヒカリ便り               平成14年6月号

  5月中旬以降は殆ど雨が降らず、カラカラに乾いて気温も低く、生活するのには極めて快適な天候が続きました。田植えの済んだ田の稲の育ちも悪く、我が家の苗代の苗も伸びなくて、昨年と比較して1週間は遅れました。こういう天候の時は紫外線が強く、気温が上がらないのと相まって、背丈が伸びずに株張りだけが強くなりがちです。苗代に目一杯水を張り如雨露で苗に液肥を掛け、ようやく10日から田植えを始めました。
 例年の事ですがその頃には、回りに田植えをする者は皆無で、充分に張ってきた株がこれ以上分げつしない様に溝切りをし、中干しに掛かっている田ばかり。それでも今年は少し判って来た人も居て、農業改良普及所の指導も有り、5月後半に植えた人も有りました。
  所が普及所の指導の様に5月下旬に田植えをすると、コシヒカリの場合8月上旬に出穂します。稲が稔るのに35日程度の時間が掛かりますので、刈り取りは9月15日前後でしょうか。この頃は例年秋雨前線が停滞し、台風がその前線を刺激して大雨になったりするのです。いっそのこと私のように6月に田植えをすると、この長雨の時期が済んで秋晴れの元、気持ちよく稲刈りが出来てしかも米の品質も良く、味も抜群にのるのですが。
もっとも収量的には6月田植えは不利です。少しでも多くの米を取りたい向きには、余り薦められません。稲だけでなく野菜でも果物でも、じっくりと稔って登熟すると本当に美味しい物が出来るのですが。夏の猛暑の時期に出穂した稲に、これは無理な事なのです。それで無くても滋賀県は県の中央に琵琶湖が有り、この水瓶のお陰で夜の気温が下がりにくく、寝苦しい夜が続きます。稲にとっても同じ事で、昼の間に炭酸同化作用で貯めた栄養分を、夜の間に消耗してやせます。収量を犠牲にしなければなりませんが、6月に田植えをし8月15日過ぎに出穂する我が家の米の品質の、秘密は此処にも有るのですが、誰も真似をしません。私一人が超遅植えなので、肥料屋をしているせいで特別上等の肥料を使っていて、とても真似は出来ないと思われているようです。ウワサだけですが。
  12〜14日には例年通り、2年前にアメリカへ送り出した農業研修生を出迎えに、東京に行きました。子供の頃からのスキー仲間で、肥料店の最大のお得意さんでもある清水光男君の長男裕介君も、カリフォルニアの大きな精米所での研修を終え、元気に帰国しました。7年前にスイスで研修した姉の理恵さんと、これで2人目の海外農業研修のOBの誕生です。30数年この仕事に携わっていますが、我が安曇川町からようやく4人目、高島郡内でも今年出発する若者まで入れて、ようやく8人にしかなりません。我が家の3人の子供にも、是非とも経験させてやりたい素晴らしいプログラムなのですが、誰も行こうとしないのが残念です。25日には26日に成田から出発する今年の研修生を見送りに、4度目の上京です。2年間の研修で大きくなって帰ってくる事を期待して。
  今朝早く、山形からサクランボが届きました。今年帰国した研修生で、本来なら秋田県大潟村での講習に入るべき所、和歌山講習に参加した加藤君ですが、先日の歓迎解散式でも和歌山講習に行って本当に良かったと言ってくれました。彼からの素敵な贈り物です。お礼の電話を掛けると、菊の畑で仕事中でした。サッカーでインターハイに2度も出場した、小柄ながら元気一杯の卓也君の活躍を祈りたいです。

inserted by FC2 system