「コシヒカリ便り」            平成15年7月

 毎年こんな事ならもう少し早めに田植えを始めても、問題なかったかなと反省するのですが、やはり十分に育った丈夫な苗でないと心配なもので、ついつい遅くなってしまいます。6月14日〜23日の間に植えた「ひとめぼれ」「コシヒカリ」「滋賀羽二重糯」は、それぞれ順調に育っていて今では見違える程に成長しました。とはいえ今年の梅雨は異常に低温で、さすがに私の田も出来遅れをしています。
 例年だと梅雨に入ったとは言っても好天が続き、これは空梅雨かなと心配になってくる下旬になって、ようやく降り始めるのですが、今年は雨量こそ少なかったものの曇天続き。おまけに7月も下旬になるというのにホームこたつが仕舞えない程肌寒く、今朝は8時で気温18℃でした。

 春先の桜の開花が、ここ数年と比較すると1週間は遅く、これが回復しないままに来ているようで、地球温暖化が喧伝される以前の気候に戻ったような感じです。梅雨の時期の季節の花「紫陽花」も、心なしか花の時期が少し遅くて長い様に感じました。稲も例外ではなく、5月の連休に田植えをした家の「コシヒカリ」でも、今年はまだ穂が出てきません。このあたりで作っている品種では早生になる「ハナエチゼン」が、ようやく2〜3日前に穂を出し始めました。

 梅雨前線の活動もおかしく、関西の上空からしばらく前線が消えていて、九州方面と関東から東北にかけての2つに分断したまま、何となく消滅してゆきました。西から順次梅雨が明けてゆくというパターンも崩れ、おまけに東北地方はシベリアの高気圧が強く、かなりの低温続きの様子。実はこの25日ころから東北地方の稲は順次、穂拵えに入ります。この時期に15℃以下の低温に会うと、花粉が出来るときに障害を受けて不稔になり、穂に実の入らない白穂になってしまって不作になります。平成5年がそうでした。

季節の移ろいが定まらないと、いろんな方面に狂いが生じます。毎年決まった様にこの時期に、友人の本田君が届けてくれるチマキは、さすがに田舎の季節感溢れる贈り物。笹の葉は何処で、イ草はあそこでと、毎年取りに行く場所も決まっている様で、朝早くから手間をかけて作り、蒸し上げてまだ温くもりのあるチマキが到来するのは、甘党の私には何よりうれしいものです。

 稲が穂を出す前には、だんだんと葉の色がさめてきます。今年は誰もが穂肥を施すのに神経を使った様で、朽木村の市場の辺りの稲の色は見事でした。この時期の緑には、毎年見慣れているはずなのに感動を覚えます。この頃に葉の色が濃いと肥料が効きすぎている訳で、そういう稲は葉の表面も柔らかく、夜露で濡れると垂れ下がりイモチ病菌の絶好の繁殖場所になります。今年は梅雨に入って曇天続きで、稲は軟弱徒長気味。イモチが発生し酷くならないかと心配していましたが、気温が低すぎて蔓延する所までは行かなかった様子。26日に梅雨明けしたと見られるとの事ですので、このまま何とか広がらずに出穂時期を迎えるといいのですが。

 その点では、私の様に6月に田植えをすると、穂肥の時期は梅雨が明けてから。思い通りに穂肥を施しても、葉色が濃くなり過ぎて病気になるという心配もなく、しかも穂が出る頃には秋風も吹き始め、真夏の炎天下に稔って味を落とす心配も無いのですが。もっとも今年は例年より大幅に生育が遅れ、大分様子が違っていてさすがに大丈夫かなと、内心では少し心配もしています。
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