今年の稲作 2005                平成17年10月
  地球温暖化の影響は年々酷くなるようです。昨年の様な度重なる台風の襲来こそありませんでしたが、逆に9月中旬以降は晴天続き。残暑が厳しく平年より1,8度も気温が高かったとか。我が家のコシヒカリはその影響をモロに受け、品質を落としてしまいました。

  5月の連休前後が周りの農家の田植え最盛期。この頃にコシヒカリを植えると、稲穂が稔るのが7月下旬から8月中旬。一年で一番暑い時期に登熟すると、米が白濁する一因となります。とりわけ琵琶湖を抱える滋賀県では、夜温が下がりにくいという致命的な気象条件があり、これを避けるには田植え時期を遅らせるより手は有りません。

  年々酷くなる猛暑に対応出来ないかと、平成13年から思い切って、それまでよりも更に半月遅らせて田植えをしてみました。周りの農家が植え終わる頃、ようやく苗代を作り始めるのですが、理屈では良いはずと思っていてもかなり勇気が要りました。しかも播種量は通常の半分。これで大きく丈夫に育った苗を6月中旬に植えると、我が家の稲はお盆過ぎから出穂し始めます。

  昨年まではこの方法で、乳白米が出ず非常に美しくて美味しいコシヒカリを収穫していました。ところが今年は秋雨前線が、10月初〜中旬に上空に停滞するという異常な天候で、9月7日の台風14号とその後の3日間の夕立以外には雨が降らず、我が家の稲は水不足で干上がってしまいました。周りの農家は収穫の真っ最中。我が家の田に水を入れようにも、水路に水は来ないのです。勝手に水を引いて来ようものなら、田が湿気てコンバインが走れないと、直ぐに堰を外されてしまいます。水路に水が流れるのは当たり前。水が漏れて田が湿気るのなら、自分で補修して直せば何の問題も無いのですが、一人だけ変わった方法での稲作は、情けないことに日本ではなかなか成り立たないのです。

 楽しい事も有りました。大阪から「手植え体験」と「稲刈り体験」に大勢の家族連れが来られ、稲の生育状況も毎週写真に撮ってHPに掲載。30cm間隔で植えて頂いたので、かなり大粒で非常に綺麗なコシヒカリが収穫出来ました。収量こそ少ないものの、見るからに美味しそうでした。希望者の方に近々お送りする予定です。

  滋賀羽二重糯の収穫も無事終了。モチ米のワラはうるち米の品種よりもかなり長くてしなやか。ワラ細工にはもってこいで、年末にはこのモチワラで南市の惣社神社の注連縄を、宮守さんと一緒に作る予定です。

  11月1〜6日の間、日本の元気な生産者と消費者が直接交流することにより、農林水産業の自立と食文化の再生を図るという、「東京ファーマーズマーケット2005」銀座・三越会場に出展します。海外派遣農業研修のOB達に、みんなで参加しようと呼びかけたのですが、時間的な制約もあって参加を表明した者が少なく、言い出しっぺの責任をとって私も参加する事にしました。

  今年のコシヒカリは乳白米が多くて、評判を落とさないかと心配ですが、試食して頂いた我が家の新米鑑定人、山小屋の田中英一先生(京都府スキー連盟会長)ご夫妻の印象は、「例年より味が濃い」とのこと。三越のデリバリー販売商品としての取り扱いにも入れて貰ったほか、キッチンカーでオニギリを提供するイベントにも使って頂けるとか。全期間参加しますので、一緒に参加するOB達とはもちろん、全国から参加する農家との交流も楽しみにしています。
inserted by FC2 system