平成5年 1993年 10月
  今年の天候については、改めて言うまでも無いかと思います。夏に雨ばかり降って日照不足で、というのはご存じの通りですが、実は5月6月も低温ぎみで、稲の成育は決して良く有りませんでした。幸い昨年百姓をやめた家から、施肥機の付いた5条植の乗用田植機を格安で譲って貰いましたので、少しですが肥料を入れながら田植えをしました。お陰で何とが初期成育の遅れを最小限に食い止められました。苗の前後の間隔を、昨年までの田植機よりも広く取れる様に改造した結果、横30cmx縦24cmと粗く植えられました。少ない日差しを稲の株元まで入れることができ、天候不良の今年の夏にもかかわらず、比較的実入りの良い稲穂が出来た様です。それでも収量は1割減と言うとこうでしょうか。
 ただ、折角4駆のトラックで牽引出来るように作ってあった田植機運搬用のトレーラーが、昨年までの4条植用の物が役に立たなくなり、鉄工所から鉄骨を買って来て、また4・5日かがって作り直す羽目になりました。トラックに積んだ苗も、田植機まで滑らせて送れるように、苗梯子を作って一人で田植えが出来るよう工夫しています。
 7月上旬、気温の上昇と共に稲の大敵であるイモチ病が、山間部を中心に大発生し始めました。ヘリコプターによる航空防除に頼りきっている農家は、余り防除にも気を使わず、大した事には成るまいと高を括っていたようなフシがあります。そして肝心の7月下旬から8月上旬の出穂期の防除時点では、雨・雨・雨。航空防除が終わるや否や、土砂降りの大雨という事もありました。もっとも我が家の田は全て、航空防除の除外地ですがら関係は無いのですが。ま、少しくらいはイモチにもかがるかも知れんが、大丈夫だうう。その為に微生物堆肥まで入れ、土造りに頑張ってるやないかと腹を決め、消毒としては例年通りに何もせず、穂肥前に微量要素肥料を少し余計に入れたくらいでした。
 紋枯病は、梅雨が明けて暑い夏が来ると心配しなければなりませんが、今年に限ってはその気配もなく、ウンカ・ヨコバイ・・カメ虫などの害虫も極めて少なくて、結局農薬の世話にはならず、台風の被害にも余り会わすに収穫を迎えました。
 農村婦人海外農業研修と言う事業があります。欧州各地で農業研修に励んでいる何人もの研修生に会えるからと言う、国際農業者交流協会からの勧めで思い切って同行し、稲刈り前の10日間、ヨーロッパへ行ってきました。
 米国へ2年間派遣する農業研修生の、渡航前講習を24年間担当しました。昨年から欧州へ1年間派遣する、平均年齢21才位の若い農業研修生のための講習所が、埼玉県農業大学校を会場に新設され、15日間の渡航前講習を担当しています。−度はヨーロッパの農業の現場を見たいと思っていたので。幾つもの農場を訪問し非常に感銘を受けました。
 オランダ・ドイツ・スイスの3ヶ国を、駆け足で見て回りました。特にスイスでは、自然と国士と環境を守るために農業が有るんだと言うように位置付け、その為に補助金を出す事に国民が合意している様です。米の輸入を自由化するのどうのこうと騒いでいる、日本の産業界に聞かせてやりたい気分でした。米は、単に国際価格との比較でのみ議論すべき問題では無い。今自由化に踏み切れば、ますます農業後継者はいなくなり、それに伴って日本から日本の原風景とも言うべき水田風景は無くなるだろう、と言うのが私の持論ですから。 お届け致しました「コシヒカリ」を、ご賞味いただければ幸いです。

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