「コシヒカリ便り」       平成9年 1997年 6月
  4月16日に苗代作りからスタートした今年の田植えも、少し苗が不足しそうだったので、5条植えの田植機の真ん中の1条を止めて最後の田を植え、昨年より4日遅れで7日にようやく全部終了しました。10年くらい前に肥料屋仲間で試したことの有る技術で、4条置きに1条植えない所が出来て、縞模様の田になります。植えてない1条のお陰でその隣の1〜2条は、風通しも日当たりも良くなって健康に育ちます。反対側の植えて無い1条のお陰で、3条目・4条目も良いわけで、田全体の稲が健康に育つと言う訳です。
  それなら何故他の田も、全部そういう様に植えないのかと言うと、植えてない部分は日当たりが良すぎて、夏を越え稲刈りの頃になると、まるで畑になった様な雑草が生えて来るからです。それなら縞模様に植える代わりに全体をすけすけに植えれば、健康な稲を作る事も出来るし雑草も生えて来ないと言うわけで、ずっとこの方法でやって来ました。
  それぞれの条間、つまり横の間隔は田植機による機械植えでは、30cmと決まっていてどこも一緒ですが、我々が下がりと呼んでいるタテの間隔は、少ない人は14〜6cmで多い人でも18cm。たまに20〜22cmくらいの人がいると目立つ位ですが、私の場合は26cmくらい有ります。30cmに出来れば縦と横が一緒の碁盤の目になって、昔のようで良いじゃ無いかと思うのですが、田植機の都合で出来ません。
  この様な植え方をすると、稲の茎が太くなって倒伏にも強くなりますし、穂も大きくなり米粒も大きくなって味も良くなります。常識的に植物の根は、四方八方に同じように伸びて行くわけで、一般に植えられているように16cmx30cmの間隔では、近い方のお隣さんの影響で根域の制限を受けるのでは無いかと思っています。例えば東西方向には8cmずつ南北方向には15cmずつ伸びるとしても、それぞれ伸びた根には茎が対応しているわけで、十分な伸び方・生長の仕方が出来ないのでは無いかと思われます。出来るだけ碁盤の目の様に植えたいと言うのは、そういう理由なんですが。
  ただ、この様な粗い植え方をすると、株が張って来るまでの1月間は非常に淋しく、普通の人はとても辛抱出来ないようです。まして私の様に、最初から2本しか苗を植えないような田植えでは、秋になると大きな穂がたわわに稔って、人一倍良い田になると言うことは認めていても、誰も真似をしようとはしません。
  面積にして4分の1が「ひとめぼれ」で、あとは「コシヒカリ」にしました。2週間もするとすっかり活着し、勢いの良い長い新葉が出てきます。日に日に生長する若い稲は若竹色で、6月下旬から7月上旬までのこの時期の田面は、本当に気持ちの良い色合いです。


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