「コシヒカリ便り」      平成9年 1997年 7月
「吉田酒造・竹生嶋の雪花」について
  辺り一面雪に覆われた昨年2月のある日、マキノ町海津にある吉田酒造の肇君から、電話が掛かって来ました。吉田酒造の造る「鳰竹生嶋」を愛飲する仲間が、米を作ることから始めて酒まで造りたいので、米作りの部分を手伝って貰えないかと云うものでした。
  社長の吉田茂芳先生は私が高校の頃の担任で、世界史を教わりました。我々が卒業すると龍谷大学に新設された経済学部に移られ、3月に定年退官されるまで副学長をしておられました。ご専門はヘーゲルをはじめとするドイツ哲学です。ご子息の肇君は、私が臨時講師としてマキノ中学校へ行っていた頃の3年生。駅伝やクロスカントリースキーの選手だったので、勉強(英語と理科・数学を担当していました)だけで無く、放課後も練習で一緒に過ごすことが多く、以来ずーと付き合いが続いています。
  米作りの仲間は「和醸会」という、旨い日本酒の研究を続ける会のメンバー。肇君以外に、その得意先の京都・北白川の「にしむら酒店」さん。そのまた得意先の、京都・百万遍の焼鳥屋さん「門」野村上さん。大阪の料理屋「淀屋本店」の岩佐さん。更にはそのお店のお客さんまで巻き込んでいます。もちろんご主人だけでなく奥さんや子供さんまで。
  マキノ町の新保の吉原さんの田をお借りし、大勢の素人さんに手順を説明し、一緒に種蒔きから田植え・草刈り・稲刈りまで、総勢30人余りでワイワイガヤガヤと、酒造用の「山田錦」を作ります。もっとも農作業は殆ど機械でやりますが。
  昨年は全く初めてだったので、「コシヒカリ」より長くて倒れやすい「滋賀羽二重糯」より、更に長い「山田錦」をどうやって作ろうかと苦心しましたが、どうにか必要なだけの米を収穫する事が出来、4月初めには純米酒「雪花」が出来ました。
  絶対に倒さないようにと燐酸肥料を多めに使い、張り切って作ったせいか米が思ったより硬くて、発行の途中で酵母が弱ってしまい、いわゆる端麗辛口という酒にはならなかったと言うのが、吉田酒造の担当者・肇君の説明でした。私の印象は少し甘口の、ワインの様な美味しいお酒、というところです。
   関係者の評判は上々なのですが、肇君には最初思っていたような酒には仕上がらなかったと云う不満があり、値段も少し下げているとの事です。店頭で見ると、兵庫県産の山田錦を使用して造った大吟醸の「鳰竹生嶋」は、販売価格1升5,000円ですので、初めて造ったと云うことを割り引いても、兵庫の山田錦に負けたという気がして残念でした。
  地元の米で良い酒を造りたいという、吉田酒造さんの方針に全面的に協力し、何時か本場兵庫県の山田錦を越えるような米を作りたいと思っています。
兵庫県・中町の山田錦  H9/9/1

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