平成9年 1997年 9月
 冷夏の予報は見事に外れ、8月中旬からは夕立も無く、気温も高くて空気はからからに乾き、これで出かけたイモチ病もおさまるかとの予想は、全く裏切られました。稲穂が出始めると次々に白くなって、今では集落によっては殆どの田に、被害田としての表示を示すハガキ大の届出票を挟み込んだ細い竹が、風に揺れている所まで有ります。
 病気は出始めると、少々の消毒では止まりません。何度も繰り返し、もう刈り取りまでの日数を考えると、残留農薬のしベルから見て使える訳は無いのにと思える頃まで、しつこく消毒を繰り返す者もおります。自分の食べる飯米用の田を除いて。
 誰が食べるのか分かっていれば、決して出来ない事だと思いますが、どうせ農協に出荷してしまうのだから、検査さえ通ればそれで良いと言うのが本書でしよう。
 今年位、地力の差を思い知らされた年は有りません。稲と病気の責めぎあいの中で、どこまで頑張って辛抱し切れるか。あるいはどの様に世話をすれば、病気を出さすに済むのか。出しても被害を最小限に食い止める手立ては何か。長期の天気予報の重要性とそれを活かす百姓の知恵。勉強しなければならない事の多い年でした。
 さて、我が家の「ひとめぼれ」と「コシヒカリ」は、一番肝心な穂肥前から出穂期の、6月下旬から7月中旬の天候が悪かったので、施して有った肥料が未消化のまま持ち越していて、葉に残ったままで色が抜けず、予定より軟らかく育っていたためにイモチ病にも少しかかりましたが、まずまずの出来で極めて元気に育っています。
 早植えのコシヒカリは刈り取りが始まりました。天候に負けず最後まで稲に活力があり、登熟が良くて粒張りの良い米を作るため、水の管理に気を使っている所です。
 酒米の山田錦も8月末には穂が出揃いました。昨年より出来が良く、これなら良い米が穫れるだろうと期待しています。9月1日には兵庫県の中町まで、本場の稲の姿を見に行って来ました。徳島とは見る時期の違いもあり、いちがいには言えませんが迫力のある稲の姿で、感動しました。
 稲作りの技術的な面では、むしろ我々の方が上だと言うのが実感でした。水は向こうでは溜め池を使っていて、水温も気温もそのほうが高いかなと思います。一番の違いは琵琶湖の存在でしょうか。夜の気温が下がらすに、寝苦しい夜の続く滋賀県と比べると、中国山地の山間の中町の条件は最高でした。これだけはどうしようも有りませんが。
 
 

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