平成10年 1998年 10月
  天.地.人と言います。農を職にする者にとって、天とは天候でしょうか。幸いに我が家は、地の意味する地勢・地形には恵まれています。何時も水害の危機に悩まされた安曇川の下流域の生家から、喜んで嫁いで来たという私の祖母は、「嫁にやりたや鍛冶屋村、漬かず込まずの鍛冶屋村」と唄にまでうたったと、母に口癖の様に言ったと聞いています。今年は少し肥料設計を変え、例年より心持ち稲の丈は長めのはずでした。予想通り色付き始めた稲が傾きかけて、大きな穂がたわわに稔り黄金色の熟色も見事でした。人事を尽くして収穫を待っていたのです。突然の大雨に少し慌てましたが、それでも家の周りの田は極めて水捌けが良くて、雨が上がれば穂先が水乾きするのを待って、収穫に掛かれます。
  来年度ヨーロッパ.アメリカに派遣する、農業研修生の選考試験の選考委員を例年通り、名古屋・岡山の二会場で勤めましたが、選考日程を挟んで「ひとめぼれ」の収穫をしました。作柄は上々で極めて順調に作業は終了。最後の選考会場である東京の日程が、台風7号の直撃を受けた9月21・22日でした。
 あらかじめ覚悟をして、全部戸締まりをして出掛けましたが、琵琶湖の東岸をまともに通ったらしく、通過直後からの凄まじい吹き返しの西風に、よくぞ耐えてくれたと誉めてやりたい位でした。幸いに弓なりになって頑張っているコシヒカリを、台風一過の秋晴れを期待し、収穫出来る日を待ったのですが、秋晴は遂に10月3日まで来ませんでした。
  除草剤を控え目に使ったせいもあり、長雨に勢い付いた雑草を被って倒されたコシヒカリは、部分的に穂が発芽しています。何人かのお手伝いを頂き、草を刈っているのか稲を刈っているのか分からんなあと自嘲しながら収穫をしたコシヒカリの品質は、決して良くはないと思います。申し訳無く思っています。例年より少し柔らかいかも知れません。水分を控え目にして炊いて頂けたらと思います。
 
 草と長雨に倒されたコシヒカリ
 長雨に倒された山田錦

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