平成10年 1998年 5月
  気温が高く好天が続くのを、天候不順と云うのかどうかは別にして、今年は何もかも生育が早く、稲の苗も異常に早い生長ぶり。まあ、つまりは軟弱徒長なのですが。早く植えて仕舞わないと伸びすぎて、田植機では植えにくくなると云う理由で、私の周りの田は4月中に殆ど植わって仕舞いました。
  田植えをする予定の日より何日も早く植えるというのは、人間で言えば、背丈は大人並みでも中学生は中学生。一人前の大人とは言えないわけで、そのまま世の中に出ても通用しにくいと言えば良いでしょうか。
  案の定、細く長く徒長して弱い苗を植えた田には、立っていられなくて水面に浮かんでいる苗が多く見受けられます。気温が高いと地上部の茎や葉は幾らでも伸びますが、実は地下にある根は意外に伸びないのです。と言うよりも、種子が持っている栄養分には限りがありますが、その大部分が茎や葉の生長に取られ、根にまで回らないと言った方が良いかもしれません。
  田植えの時にはその大事な根も切られて仕舞います。そして次の根が出てくるのに1週間は掛かりますが、その間は風雨にさらされてまるで洗濯物が風で乾くように、乾燥してしまいます。水の中にいながら水を吸うための根が無いのです。
  いつの間にか、お百姓さんの稲作技術が随分と低下してしまったなあと言うのが、今年の苗代時期の感想です。苗代には色々な方式が有りますが、いずれにしても温度管理をするのは人間で、ずんぐりした丈夫な苗を作るのは、温度を低めに管理しさえすれば良いのですが。
  我が家の苗は極めて順調に育っています。農ポリには早めにカッターナイフで穴を開け、しばらく外気に馴らしてから、思い切って28日に外しました。田植えは予定通り、5月12日から始めました。
  まあそうは言っても、作物の生長が早いのは今年の特徴で、イチゴの花も例年より早く咲き、インゲンが4月中に食べられそうなほどに生長したと、母も驚いています。長崎の友人が毎の様に送ってくれるタマネギが、4月30日に届きました。九州も季節の移ろいが早いようです。
  冬に殆ど雪が降らなかったため田の草が多く、トラクターで2度ずつ起こして田植えの準備は完了。今年は少し肥料設計を変え、植え付け時の元肥に新しい有機質肥料を使うつもりです。昨年使った肥料は穂肥前に残りすぎて、稲の色抜けが悪くて面白くなかったので、今年こそはと張り切っているわけです。
  今年から高島郡内では、夏場のヘリコプターによる農薬散布が無くなりました。元々農薬に頼らないで米を作っている私の様な百姓には関係は無いのですが、今春から売り出されたウインアドマイヤーなどの、苗に散布して田植えをすれ、梅雨時に出るイモチ病から、夏の虫にまで効果があると云う農薬を皆で使い始めました。残留農薬が問題になるまでには年月が掛かるでしょうが、自分が使うのは嫌だからと販売もしていません。
 
 

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