平成10年 1998年 9月
 一昨年の2月、マキノ町海津にある吉記酒造の、肇君からの電話で始まった「山田錦」作りも、今年で3年目になります。大蔵省の醸造鑑定で金賞をとる酒はその殆どが、稲としては極めて作りにくい、この「山田錦」から造られるといいます。
 コケヒカリなどと悪口を言う程、倒れやすく作りにくい「コシヒカリ」と比較すると、10cm位長くてもっと倒れやすい「滋賀羽二重」より、まだもう少し長い「山田鏡」を、なだめすかして(百姓技術の粋を集めて?)収穫まで持って行くのに苦心しています。
 一昨年は、ともかく初めてのことなので倒さない事に集中。燐酸質肥料が少し多すぎたせいか米が堅くて、酵母が途中で謳ってしまって発酵が止まり、最初の狙いよりも少しばかり甘口の酒になった様です。ワインの様な風味の有る酒で、気に入っていたのですが。
 昨年は8月の初めに徳島県、9月になって本場兵庫県へと、山田錦を視察に行って来ました。徳島県では、あいにくの大雨のなか県の経済連の方々の案内で、何か所かの田を見せて貰いました。山田錦の穂は8月末から9月初めに出ます。私たちの出掛けた8月の初めは、丁度最後の穂肥を施す頃で、小さな幼穂は茎の中に出来ていますが、外見では余り感ずる所は有りません。せつかくだから本場の山田錦も見ようと、穂が出るのを待って兵庫県の中町へ行って来ました。同じ住友肥料の販売店である吉田商店のご案内で、生産農家の中でも特に優秀なお宅の、何枚かの田を見せて貰いました。
 正直な感想では、徳島県には負けないが兵庫県はさすが本場、と言うところでしたが、出来上がった酒も全く正直にその順番だった様です。
 一昨年のマキノ産山田錦で造った酒は、名勝マキノ町海津大崎の、桜並木の雪景色にちなんで「雪花」と名付けられましたが、今年はその名を徳島産の山田錦で作った酒に譲りました。新しく付けられた名はやはり、600本とも言われる桜並木の、花の散る様から名付けて「花嵐」となりました。
 慣れて来て稲の作り方も上手になったのですが、昨年は収穫後の調整にも気を使い、酒米用の目の粗いライスグレーダーを使用。品質の良い米を収穫する事が出来ました。
 今年は5月13日に、吉田酒造の肇君や地主の吉原さん、京都の西村酒店の仲間ら10数人で山田錦を植えました。昨年同様の4、5反の作付けで、目標の30俵には少し足りないかも知れませんが、本場の山田錦を越える品質の良い米を穫るのが目標です。
 
兵庫県中町の山田錦  H9/9/1
 

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