今年の稲作 2005
 地球の温暖化が言われる様になってかなり時間が経ちますが、その影響は年々酷くなるようです。今年の天候はそれこそ異常でした。そしてこれが更に加速度的に悪くなるのかと思うと、手の施しようが無いだけに不安が募ります。稲作の場合には、温暖化の影響は生育の前倒しというかたちで現れます。品種によって影響を受ける度合いは色々ですが、感温性の高いコシヒカリは気温に敏感で、平均気温が高くなるとそれだけ生育が進んでしまいます。連休に田植えをすると私の周辺では、7月20日には穂が出ます。30日で稲刈りになりますので、コシヒカリは一番暑い猛暑の下で登熟することになります。
 稲は熱帯性の植物と思われていますが、此処まで気温が高くなると色々な障害が出て、米の品質を落としてしまいます。今年はこの高温に加えて度重なる台風の襲来があり、大半の田でコシヒカリは倒伏しました。本来コシヒカリは、しなやかでコシの強い品種なのですが、これだけ再々大雨にたたかれるとさすがに耐えられませんね。お得意先の農家でも、倒伏軽減剤入りの穂肥を使って頂いた方は、かなり傾いても倒伏までは行かず、収量も良くて豊作でした。実はこの肥料は「住友化学」にしか無くて、郡内では私のお得意先の農家だけが使っておられ、その意味では大成功を収めた年でした。
 肥料屋をしておりますが私はこの種の化学肥料は使わず、元肥から穂肥まで全量を有機質100%の肥料で育てています。真夏の猛暑を避けて稲が登熟するよう8月中旬に出穂し、じっくりと40〜50日掛かって稲刈りになるようにと設計すると、田植えは6月中旬・稲刈りは9月下旬からになってしまいます。
 かつて農業改良普及所では、コシヒカリという品種は遅くとも、5月20日までに植えないと米にならないと言っておりましたが、昨年の様なイモチ病も出ず我が家は今年は豊作でした。 種籾の消毒にも農薬は使わず、60度の温湯に10分間浸ける事で病気を防いでいます。田植え後一度だけは除草剤を使いますが、生育期間中には殺菌剤も殺虫剤も一切使わ無いので、条件の悪い処は多少病気も出ますが、まずは無難に収穫期を迎えました。これは土造りに時間と労力を惜しまず、良い堆肥を十分に入れて秋起こしをしているお陰でしょう。
 8月から5度・6度と上陸した台風は、殆どの場合に大雨を伴いましたので、周辺の農家では稲刈りに難渋しておりました。出穂が遅く8月一杯は田に水を入れている時期になる我が家では、気温の下がる秋になっての大水に心配させられました。部分的には稲も倒れ水も捌けずにぬかるんで、手こずる処も有りましたがおおむね大丈夫。コンバインが煮え込んでの難儀も、ウインチ付きのパジェロで引っ張ったりトラクターで牽引したりで、何とか最小限に切り抜けました。 永年の得意先農家で稲作をやめる方があり、乾燥機を譲って頂きました。2反分近くの籾が入りますので収穫作業がうんと楽になり、とりわけ天候不順の今年は大助かりでした。 今年は「コシヒカリ」と「コシイブキ」・「滋賀羽二重糯」酒米の「山田錦」を作っています。「コシイブキ」は新潟県が育成し、県外では作付けの出来ない品種。今年初めて作らせて頂いた高島町北鴨の伊勢講、通称「しめ講」の田も、この「コシイブキ」。10月、全部の田の刈り穫りが済んでから、長男と伊勢神宮にお参りして新米をお供えしました。内緒で作っておりますが、作りやすくてしかも美味しいお米です。今年から作らなくなった「ひとめぼれ」の袋に入れておおりますが、中身は「コシイブキ」です。

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