コシヒカリ便り                 平成15年5月

 地球温暖化の影響が無くなったとは思えませんが、桜の咲くのも此処2・3年に比べると1週間程度遅く、以前の気候に戻った様な移ろいでした。寒暖の差が大きく雨の日が多かったのも今年の特徴で、そのせいか育苗を失敗した農家も有りました。昼前になって気温が上がってきても、兼業農家の場合には育苗ハウスを開けて温度を下げるために、勤務先から帰る事が出来なかったり、専業農家でも農作業に出ていたりすると事情は同じで、苗を高温障害から守る事が出来ずに失敗します。

 5月3・4日は田中祭りでしたが、好天に恵まれ非常に暑いお祭りで、太鼓を担ぐ役目で参加した佐千夫もぐったりしていました。連休が終わると天候が急変。8日などは寒い上に風雨が強く、それでも田に出て代掻きをしている農家はともかく、田植えをしている者もいて何を考えているのかと腹立たしい思いでした。こんな日に植えた苗がまともに育つ訳は有りません。行政も力を入れて、5月の連休田植えを止めさせるようにしていますが、兼業農家の多い滋賀県ではあまり効果は無いようです。連休も日曜も関係なく農作業をする日本の農家を、「デモ・シカ百姓」と呼んでいます。「デモ・シカ先生」と言う言葉は「先生にデモなるか、先生くらいにシカなれない」という意味で使っていましたが、「デモ・シカ百姓」というのは「日曜でも仕事をする専業農家・休みの日にシカ仕事をしない兼業農家」という意味で、私の造語です。かくして肥料商は休み無しに働く、と言うのがオチですが。

 連休が終わると周りの農家の田植えが一段落し、私も苗を作る時間が取れます。今年も例年通り10日過ぎに苗代に苗箱を設置する予定で、仕事を始めました。私が苗代地に使う田は石ころだらけのガラガラで、水捌けが良くて稲は非常に作りやすい所ですが、まるでドロ遊びをするようにして、高低差が無いように丁寧に平らにし苗箱を置いて行く作業は、全部が手仕事のためにかなりな重労働になります。今年も佐千夫と2人で、苗箱を並べるだけに1日半掛かりました。それでも苗床が全く平らに出来ている訳ではなく、完全に密着していない部分は水が上がらず、苗が旨く育ちません。何日かは気の揉める日が続きます。

  24日、マキノ町で山田錦を植える予定の1町2反の田に、1トン半の培養資材を散布しました。昨年の秋に撒いてから田を起こして置くべきなのですが、雨が多くて間に合わず、周りの田は全部植えられて水を満々と湛えていて、当然山田錦を植える田にも水が有り、仕方なく背負い式の動力散布機で3時間掛かって撒きました。3人で仕事をしたので比較的ましでしたが、結構な仕事でした。

 午後、29日に植える予定の山田錦をNHKが取材に来るからとのことで、吉田酒造専務の肇君、栽培農家の吉原さんと一緒に、担当の女性キャスターと田の側の路上で打ち合わせ。あらかじめ吉田酒造と私のホームページをプリントして持ってくる程の勉強振りでしたが、全く農作業の何たるかを知らない若いお嬢さんに、1年間の米作りを1時間で説明するのは一苦労でした。稲作りに2分・酒造りに1分、合計3分間の放送と言われると、まとめ上げるディレクターも放送するキャスターも、大変な仕事だと言うのが実感。天候が良くて良い映像が撮れることを願っています。

 放送日などは聞いていませんが、30日頃になるのでしょうか。
少しは私も出演する予定なのですが、やはり酒造りが主体なのでどうでしょう。
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